柏の中国料理文菜華

03+more

文菜華壁画アート 襖絵「銀杏」

襖絵師 島田由子さん

「+more」は、リニューアルした文菜華のテーブルを彩る珠玉のアイテムができあがるまでの誕生秘話と、コラボレーションしてくださった作家さんの横顔をご紹介するコーナーです。

3弾は文菜華5階のエレベーターホール壁面を飾る、襖絵「銀杏」の物語。文菜華とのご縁や制作にまつわるお話を襖絵師の島田由子さんに伺いました

文菜華の壁だからこそ映える奥行きのある襖絵

文菜華の壁だからこそ
映える奥行きのある襖絵

2022年12月にリニューアルオープンした文菜華ですが、5階建ての新店舗はそれぞれ階毎に個性的なフロアで構成されており、1階のエントランスからお客様を各フロアにご案内する時、エレベーターに乗って移動します。5階へ上がりエレベーターを降りると、そこでまず初めに目に飛び込むのがこの大きな銀杏の絵。鮮やかな黄色の力強いパワーを感じるこの3枚構成のこの絵は襖絵(ふすまえ)なのです。まるで大きなガラス窓から外の風景を見ているような、不思議な奥行きを感じるこの襖絵とのご縁についてお話ししましょう。 実はこの絵の前に、あるお客様からリニューアルオープンのお祝いにと、蓮の花の絵をプレゼントしていただきました。そのお客様はさらにもう一つ贈らせてほしいとおっしゃるので、では、どんな柄が良いかとご相談がありました。その頃、秋だったので紅葉かなというお話になったのですが、赤や茶色だと暗めになるので、明るい黄色の銀杏を描いていただくことになりました。その絵が当時開催された柏ゆかりの作家展「共晶点」に展示されるので、それを見て気に入ったら文菜華に飾ってください、というお申し出をいただき早速会場へ。そこで拝見した「銀杏」の襖絵は、それは素晴らしく、鮮やかながらそれでいて落ち着きのある品の良い絵で、奥行のあるその襖絵が、きっと無機質な場所に温かさを生み出してくれると確信しました。
「私が描くのは襖絵なのですが、この銀杏はやや絵画的な描き方です。普通の家の和室だと強すぎると思いますが、展覧会場や文菜華さんのようなお店の中はこうした派手なものが映えそうなので、描き方はいつもの襖絵とは違っています。普段から襖絵はなるべく描くものはシンボリックで『引き算』の美学なのですが、この絵はそれに少し足してみた感じですね。 アート作品と襖絵の違いとして、襖絵はその場の空間演出をするために描くものです。空間ありきなので、いわばインテリアの一つだと思っていただければわかりやすいでしょうか。大きな1枚の絵ではなく3分割なのも襖絵だからこそで、これが実際に襖になると、開け閉めするのでこの幹の部分が消えてしまう瞬間もあるわけです。また、3枚がどういう重なりをしても絵になるように、さらに閉まった状態から少しずらしても違和感のないように若干柄をずらして描いています。横から見ていただくとわかりますが、端の巻き込むところにはあってもなくてもいいつなぎの絵を両脇10センチくらいに描いています。これも額縁に入れない襖絵ならではです」(島田さん)

襖絵師 島田由子さんとは

今回襖絵を描いてくださった島田由子さんについてご紹介します。

日本画に興味を持ったのは中学生の時。美術の資料集で見た長谷川等伯の「松林図屛風」という墨だけで描いた絵がなぜか心に響いて、その時から日本画の素晴らしさに魅了されていたそうです。大学は金沢美術工芸大学の日本画を専攻。しかし、展覧会に出し続けて、人よりも目を引く絵を描くのが自分に合ってないと思っていたことから。しばらく制作から離れていました。

30年前、子育て中に、自宅でできる仕事として襖絵を印刷する加工屋さんのアルバイトでデザインを提供していました。そこで絵のバランスや引手や巻き込みを計算にいれることなど、襖絵の条件を覚えたのです。問屋さんが作る見本帳に採用されるデザインをたくさん考えたのですが、手描きではきれいでも薄い色合いとか箔などがあるデザインは、印刷工程に出すと使い物にならないということもわかりました。そんな時に大学のOB会で個展に誘われ襖絵を描いて展示したのですが、インテリア業界にいる先輩がその絵を実際に襖に採用してくれたのです。『大丈夫よ、いけるわよ!手描きの襖なんて初めて見たわ』

と言ってくれた。そこから私の襖絵制作が始まったのです。

襖絵は眺めて楽しむのではなく、生活の中で使うものとして楽しんでもらいたい。手の届かないものにしたくない。私が好きな絵ではなく、お客様が求める空間を創るための提案をしたいのです。仕上がりも施主様のご意向に沿いたいし、ご予算の中できるようにするには紙の質や柄の付け方で変えられるけど、結局自分が納得するように仕上げてしまいます。また、印刷では出せない淡い色や箔、特に箔は絶対使うようにしています。常にどうやったら印刷でできないものを描けるかを考えています。

今、大学で日本画を学んだ人は卒業したら展覧会などに出す作家活動しかないと思ってるだろうけど、文菜華さんのように自分たちのために襖絵を描いて欲しいという店舗さんが増えれば、襖絵を描いて食べていこうという人も出て来るのではないでしょうか」(島田さん)

4階エレベーターホールには無花果の襖絵を飾っています。これらの襖絵を額に入れないのは、絵と見る人の間に仕切りができてしまうから。ビルの中にいても外の季節を感じられるような感覚を楽しんでいただきたいです。

レストランは文化を楽しめる社交場です。島田さんのように柏で活躍されている方々に、アートの力を持って僕らのレストランの料理の味を引き出していただきたいと思っています。これからも柏の文化を発信していきます!

profile
島田 由子(しまだ よしこ)

金沢美術工芸大学 日本画専攻 卒業
襖絵を中心に、室内装飾のための画を制作。
個人宅の襖絵・屏風・掛画の受注制作多数
店舗、社寺からの受注制作
・表参道 茶茶の間 店輔壁面パネル
・徳樹庵三芳店 壁画
・金沢文庫 正法院 天井絵 他
HP:https://kusahana.com

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